【県庁庭園の植物 編集後記】

 宮崎県文書センターに収蔵されている古い記録によると、県庁本館は、昭和7年10月4日(1932年)に竣工し、以来今年で、77年を経ています。 

 新築当時の県庁本館植栽図によると、近世ゴシック式の正面玄関両脇に、ビロウ、ソテツ、シュロが配置され、洋風の玄関前庭には、中央のフェニックスを取り囲むように、ソテツ、リュウゼツラン、サツキツツジなど、南国らしい植物が多く植えられていたようです。 この中央のフェニックスが、宮崎県第1号のフェニックスとなったのだそうです。


 さらに古い文書によると、県庁新庁舎完成の1年前(昭和6年10月24日付け)、知事名で(第24代有吉実知事)、全市町村長宛て、新県庁庭園の植栽に適した植物の寄贈依頼の文書が発せられ、『 新しい県庁庭園に適する植物として、宮崎県は南国なので、南国情緒を表すべき植物を選んでいただきたい。熱帯植物皆無の地は、観賞植物……。広く県下市町村から寄贈を待つ…… 』 との添え書きもされています。

 この古い文書から、当時どんな考えで庭園の植栽が行われたのか、どんな方法で植物が選ばれたか、窺い知る手掛かりが得られました。

 この寄贈依頼の結果、県下各地から、蘇鉄、ビロウ、竜舌蘭、棕櫚、マキ、白檀、ヒトツバ、五葉松、ひもみじ、瓢箪枇杷、サルスベリ、欅、銀杏、ヤツデ、青木、樅、オガタマ、フェニックス、濱万年青、サボテン、磯シマゴ、大かいどう、ひむらさき………など、数多くの貴重な植物が寄せられたようです。

 県庁庭園は、昭和37年(1962年)、新館(現在の1号館)新築完成に伴い、改修が行われていますので、県庁本館新築から77年の長い歳月を経た今日、残念ながら、県下各地から寄贈されたこれらの植物の中には現存しないものも多々あるようです。


 このほか、正面玄関西側のオガタマノキは、大正9年3月28日、昭和天皇が皇太子の頃、御来県された記念に、旧県庁舎庭園にお手植えされたものが、宮内庁と協議の上、新築された県庁本館玄関脇に植え替えられたとのことで、歴史的に貴重なオガタマノキであることもわかりました。


  また、正面玄関前の噴水両脇に広がるユニークなガンセキチュウサボテンは、昭和40年に撮影された当時の県庁庭園の写真にも既に写っています。
 県庁新庁舎完成時に、本庄町(現国富町)からサボテンが寄贈されたという古い記録がありますので、このサボテンがガンセキチュウサボテンのルーツかも知れません。


  なお、クス並木通りの南側に広がる県庁南庭園は、本館が新築された昭和7年当時、県公会堂、県立図書館などの建物が並んでいた跡地を庭園化したもので、昭和45年8月、南庭園開園式が行われたとの記録がありました。
 南庭園の造営は、県庁庭園に比べると、かなり新しく、40年近く前のことになりますが、県の巨樹百選に指定されているヤマモモのほか、見事なモクセイ(ギンモクセイ)やソメイヨシノ、ウバメガシの古木も移植されています。


 このように、県庁庭園の植栽には、相応の歴史的経緯があり、当時の市町村や県民の郷土愛と全県挙げての地域協力のもと、庭園のベースがつくられ、今日に引き継がれてきたものといえます。
 
 県庁を訪れる多くの人々がこのような県庁庭園のルーツや貴重な歴史的経緯を踏まえて、県庁庭園を散策・、観賞していただければと思い、あえて古い記録を宮崎県文書センターで調べさせていただいた次第です。

                    (2009年11月10日)

P1140868-3県花ハマユウ  09.9.14県庁南庭園

P1140866-3ヤマモモの巨樹 09.9.14県庁南庭園  

P1150637-3ガンセキチュウサボテン 
09.10.13県庁庭園
  

P1140501-3県庁&見学の人々  09.9.05

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P1150735-3モクセイの大木 09.9.14県庁南庭園  

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P1020389-3南庭園定礎 08.2.19県庁南庭園  

P1140603-3オガタマノキ御手植の碑
09.9.14県庁庭園